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【チャート式と共テ】白チャートだけで共通テストは余裕?【2023数学ⅠA第1問】

目次

どの参考書を信じて進むのか

大学生活の傍ら、個別指導の塾講師を2020年から行っていて、そこから換算すると3年近く教育業界に関わっていることになる。感じるのは、生徒自身の成績の伸びは、結局生徒の自主学習によって大きく左右されるということだ。もちろん、大学入試の結果も自主学習が大切である。そこで議論となるのは「どの参考書を使って勉強するか」という事である。また、その参考書を使って学習することで「どれほどの目標が達成できるのか」。これは参考書の学習前も学習中も気になってしまう話題である。

「白チャートで京都大学に合格できる」?

受験業界では度々「◯◯という本で□□大に合格する」等と話される。また例えば、上の方のYoutubeチャンネルでは「白チャートの問題を組み合わせればどの入試問題でも解ける」と話がされている。さて、これらの話をどうやって信じて、分厚い白チャートを進めていこうか。これは実際の入試を見ながら、比較し確かめていくしかない。

本当に『白チャート』で大学入試の問題を解ける?

そもそも『白チャート』とは?

「白チャート」とは数研出版の高校数学参考書『チャート式』シリーズの『基礎と演習』を指す。白い表紙のチャート式なので、通称「白チャート」と呼ばれている。カバーのそでには「基礎固めに最適な参考書」と記されている。なお、より難しいレベルの参考書として、黄色・青色・赤色のチャート式がある。

数研出版のHP https://www.chart.co.jp/sp/goods/item/sugaku/52930.php では『白チャート』は<大学入試共通テスト対策まで対応>との記載がある。本当に対応できるのだろうか。議論してみる。

白チャートは<大学入試共通テスト対策まで対応>の参考書。

白チャートで共通テスト数学ⅠAを解けるか

では実際に大学入試センターによる「令和5年度(2023年)共通テスト本試験」の「数学Ⅰ・数学A」と、数研出版の白チャート(新課程版)について、対応を見ていく。つまり、白チャートの例題等の問題を組み合わせる事で共通テストの問題を回答するまでに行き着けるのか議論していきたい。

※解説などは行わないが、以下のサイトの解法に概ね沿って対応を考えている。必要があれば以下を参照されたい。
東進ハイスクール 共通テスト解答速報

「2023共通テスト数学ⅠA」の第1問[1][2]と白チャート例題との対応を考えていく。

白チャートで共通テスト数学ⅠAを解けるか【第1問[1]】

第1問[1] 1次不等式

※左列の点数は、赤字の解答の部分が全て書けた場合の得点を表す。また右列の数字は白チャートのうち特筆なければ数学Ⅰ部分の例題番号を表し、①②などの記号はコンパスの数を表す。①は教科書の例レベル、②は教科書の例題レベル、③は教科書の応用例題,補充問題レベル、④は教科書の章末レベル、⑤は教科書を超えるレベルとのことである。

【共通テスト ※赤が問題部分の正答】【白チャート
該当例題】
実数\(x\)についての不等式 \(|x+6| \leq 2 \) の解は
\[
\color{red}{-8} \leq x \leq \color{red}{-4}
\]である。(3点)
基本例題
38②「絶対値を含む不等式」,
32①「不等式の性質」,34②「1次不等式の解法」,35②「連立不等式の解法」
実数\(a,b,c,dが|(1- \sqrt{3} )(a-b)(c-d) +6| \leq 2 \)
を満たしているとき,\( 1 – \sqrt{3} \) は負であることに注意すると,
\[
\color{red}{2}+\color{red}{2}\sqrt{3} \leq (a-b)(c-d) \leq \color{red}{4} + \color{red}{4} \sqrt{3}
\]であることがわかる。(4点)
※既に出た問題は略する
基本例題
29②「分母の有理化」
特に\[ (a-b)(c-d) = 4 + 4\sqrt{3} \quad \cdots ① \]であるとき,さらに
\[ (a-c)(b-d) = -3 + \sqrt{3} \quad \cdots ② \]が成り立つならば\[ (a-d)(c-b) = \color{red}{7} + \color{red}{3}\sqrt{3} \quad \cdots ③\]であることが,等式①, ②, ③の左辺を展開して比較することによりわかる。(3点)
基本例題7①「式の展開…基本」(分配法則)
2023年共通テスト数学Ⅰ・数学A 第1問[1]と白チャート問題番号の対応

今年の第1問は基本的な問題だったからか、白チャート内に対応問題があるどころか、全て①②レベルの問題と対応できた。最後の問題で、展開して①-②=③を導く部分を例題7とだけ結びつけるのは(項の数によって計算量が違う等で)多少強引だったかもしれないが、基本的には第1問[1]の全ての問題と白チャートの問題を対応させる事ができた。

白チャートで第1問[1](1次不等式)は10点満点中10点を取ることができた!

白チャートで共通テスト数学ⅠAを解けるか【第1問[2]】

第1問[2] 図形と計量

【共通テスト ※赤が問題部分の正答】【白チャート
該当例題】
(1)点Oを中心とし, 半径が \( 5 \) である円Oがある。この円周上に2点A, BをAB=6とおなるようにとる。また, 円Oの円周上に, 2点A, Bとは異なる点Cをとる。

(i) \(\displaystyle \sin{ \angle ACB} = \color{red}{\frac{3}{5}} \) である。(3点)
・中学数学(二等辺三角の性質、三平方の定理、円周角の定理)
・基本例題111①「直角三角形と三角比の値」
・(数学A)基本例題62①「円に内接する四角形と角の大きさ」
・基本例題118①「鈍角の三角比で表す」
[別解]・基本例題126②
「正弦定理の利用…基本」
また, 点Cを\( \angle ACB \) が鈍角となるようにとるとき, \(\displaystyle \cos{ \angle ACB } = \color{red}{-\frac{4}{5}} \) (3点)・標準例題120③「三角比の相互関係…θが0≦θ≦180°」
(ii) 点Cを \( \triangle ABC \) の面積が最大になるようにとる。点Cから直線ABに垂直な直線を引き, 直線ABとの交点をDとするとき, \( \displaystyle \tan{ \angle OAD } = \color{red}{\frac{4}{3}} \)(2点)・中学数学(底辺固定のときの三角形の面積最大)
・基本例題111①
また, \( \triangle ABC \) の面積は \( \color{red}{27} \) である。(2点)・中学数学(三角形の面積)
(2)半径が5である球Sがある。この球面上に3点P, Q, Rをとったとき, これらの3点を通る平面α上でPQ=8, QR=5, RP=9 であったとする。
球Sに球面上に点Tを三角錐TPQRの体積が最大となるようにとるとき, その体積を求めよう。

まず, \( \displaystyle \cos{ \angle QPR } = \color{red}{\frac{5}{6}} \)(2点)であることから,
・基本例題127②「余弦定理の利用…基本」

\( \triangle PQR \)の面積は \( \color{red}{6\sqrt{11}} \) (3点)・標準例題120③
・基本例題134②「三角形の面積」
次に, 点Tから平面αに垂直な直線を引き, 平面αとの交点をHとする。このとき, PH, QH, RHの長さについて, \( \color{red}{ PH = QH = RH } \) が成り立つ。(2点)・中学数学(底面固定のときの体積最大、合同より長さが等しい)
以上より, 三角錐TPQRの体積は \( \color{red}{10(\sqrt{11}+\sqrt{2})} \)(3点)・例題126②
・中学数学(三平方の定理、角錐の体積)
・基本例題11②「共通因数のくくり出しによる因数分解」
2023年共通テスト数学Ⅰ・数学A 第1問[2]と白チャート問題番号の対応

白チャートで第1問[2](図形と計量)は20点満点中20点を取ることができた!

【結論】2023共通テスト数学ⅠAの第1問は白チャートで解ける

今回は、共通テスト第一問を解く際の知識や技能は白チャートの問題に対応させる事ができるのか考えてみた。私の考えとしては「中学数学と組合せれば全て解ける」という結論だった。ただ[2]では、「三角形の面積を最大にする」話しから「三角錐の体積を最大にする」話しへの考察なども必要であったので、白チャートに加えて「前の問題がヒントになっているパターン」の演習も必要である。

(中学数学を組合せた図形の考察が出来れば)第1問は白チャートで30点満点中30点を取れる事が分かった。

今後も、共通テストや入試問題について参考書との関連を見ていきたい。

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この記事を書いた人

北海道大学理学部数学科の学部四年生。2020年の9月から学習塾の個別指導にて中高生の数学や英語講師を務める。

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